Vol.2 ”モビリティ”と”地方のライフスタイル”
ゲスト 寒竹 聖一
(WILLER TRAINS株式会社 代表取締役)

第二回は、京都丹後鉄道(丹鉄)を運行するWILLER TRAINS株式会社の代表取締役として、丹鉄の再生や地方型MaaS実現に取り組む寒竹さんをゲストに迎えました。

前半では、2015年から始まった丹鉄沿線でのWILLERの取り組みを中心に、鉄道・交通事業者としての地方における「まちづくり」の戦略(エリアやターゲット)、それを通じて実現したい地域像を語っていただき、後半では、参加者からご提案いただきましたカルタを見ていただき、これからの地方都市における「ライフスタイル」の兆しについてお話しいただきました。

前半のご講演の中で印象深かったお話が2つありました。1つ目はITの会社であるWILLERさんが丹鉄の再生だけではなく、周辺のまちづくりにまで取り組んだ経緯、2つ目はMaaSと鉄道の組み合わせから生まれる可能性についてです。

―鉄道が持つ価値を使ったまちづくりに全力投球―

WILLER株式会社は、公共交通がそもそも持つ意味を信じて、運輸とITを組み合わせたビジネスを進めてきたそうです。その中で上下分離の仕組みと絡めることで、鉄道事業を発展させたというお話がありました。そもそも、「上下分離は公共交通に必須の仕組み」であり、鉄道が持つ価値を使ってまちづくりを行うことがミッションであったということでした。

その中で114kmという沿線距離を資産と捉えたときに、何ができるかが常に命題としてあったそうです。その中で、沿線での活動を数多く地道に行い、周辺住民の人たちに鉄道、列車の価値を知ってもらうということを大切にしたというお話がありました。

例えば、「幽霊列車」という大人ではなく子供向けのイベントに力を入れる、観光列車を走らせるなど、列車に乗ること自体が家族でのレジャーになるようにしたそうです。中でも、最も革新的だったのは、当時から株式会社の垣根を超えて、JRと共通の切符を整備したことでした。このようなイベント実施だけではなく、駅に回収ボックスを設けた廃油回収事業、災害時の鉄道利用についても実施されており、環境や安全といった面からも沿線のまちに寄り添っていて、鉄道は移動だけではないというお話が特に印象的でした。

ご講演の様子

―都会よりも地方はMaaSを導入しやすい―

実は、都会よりも地方のほうがMaaSを導入する地盤が整っているというお話も印象的でした。これまでに、鉄道の移動だけではない価値を実践してこられたのですが、そこにMaaSを加えてまちをつくっていくという事業も進められたそうです。新型コロナウイルス感染が拡大する以前から、国土交通省の新モビリティサービス推進事業に手を挙げ、丹鉄沿線ではQRコード決済導入によって検索予約決済が一気通貫で行えるサービスをスタートさせるために、実証実験を行ってきたそうです。

「MaaSが発展していくと、そもそも鉄道が必要なくなってしまうのでは」という問いに対して「そんなことはなくて、まずは鉄道というものの強みを活かして、MaaSはその間を埋めるものです。むしろMaaSの目指す姿は、公共交通手段そのものが、それぞれの価値を活かして共存することを可能にするものだ」と寒竹さんはおっしゃっていました。

ディスカッションの様子

後半では、参加者からいただいた20年後のライフスタイルを想定した“カルタ”について、寒竹さんからご意見いただきました。“カルタ”は大きく「交通」「技術」「余暇・暮らし」のテーマで議論しました。その中で、公共交通と車との競合の話が、共通してありました。技術がどんどん発展していく中で、鉄道そのものの価値である「高速・大量・定時」だけではない新たな価値を作っていかなければいけないということ、それを想定したライフスタイルを考えていくことが大切だというお話でした。

また、公共交通が十分でない地方での暮らしでは、一日中家族の送迎をしている“運転ができる主婦”が一番不自由な思いをしているというお話が印象的でした。今後はAIオンデマンド交通や自動運転等の新たな交通サービスの普及と公共交通の組み合わせによって、豊かな暮らしを実現させることが必要で、新しい生活様式を余儀なくされる今だからこそ、その可能性が広がるとのことでした。

さらに、寒竹さんがカルタを作るとしたらという問いかけには「駅に保育園をつくり、そこが結節点となるライフスタイル」というカルタのご提案もいただきました。今回の公開研究会は、モビリティの様々な価値を見直すことで、遊ぶことに忙しくなる、そんなライフスタイルも20年後にはありえるのだというポジティブな気持ちにさせてくれるものでした。

(松尾 薫(大阪府立大学))

スケジュール

vol.2 ”モビリティ”と”地方のライフスタイル” / ゲスト 寒竹 聖一(WILLER TRAINS株式会社 代表取締役)
前半 ゲストトーク(寒竹 聖一氏)
後半 ゲストを交えたディスカッション


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