We much so much at 街.

笹尾和宏(京都大学)

顔見知りを生む生活圏の形成

| 対面しやすさの価値が相対的に下がる

私たちはお互いに離れていても本当に目の前に実在するかのような感覚で遠隔コミュニケーションできるようになります。

根拠:情報通信技術及び計算処理速度の発達により、視覚では違和感がなくなり、聴覚・嗅覚・触覚までもがあらゆる場所で入力&出力(転送)されるようになります。

| アーバンウェルビーングへの傾倒が進む

個体としては屋外からの遮断ではなく屋外との接続(日光、風、空気、動植物、微生物、水…)を求めるようになります。社会としては自然を制御するのではなく自然を受容することを前提とした空間形成が進められます。

根拠:諸々の機器操作の自動化やAIの自律行動によるひと作業の代替により、ヒトの活動において創造性がより求められるようになります。
個体としては、心身の健康が重視され、多様なライフスタイルを前提に画一性が否定され、均質化されない空間や機能が都市には求められるようになります。
社会としては、多様であることが重視されるようになります。経済合理性や効率を重視した都心部の都市計画の見直しが促されます。

|住まいを徒歩圏内に含む極小都心が形成される

住まいを徒歩圏内に含む10万人規模の極小都心が形成されます。まちなかですれ違い人数の絶対数が減る結果、知った仲・コミュニティが形成されやすい環境が実現します。

根拠:2020年代までは鉄道ターミナル駅の周辺一帯は交通利便性の観点で職住遊泊すべての機能において最も立地ニーズが高く、高度化高密化が進められていました。
上述の遠隔コミュニケーションの進展によりターミナル駅の交通利便性の重要度は下がります。
結果、ターミナル立地型の都心部に集中していた極端な床面積ニーズは解体されます。
都市移動モデルは、周縁部から巨大都心一か所に移動する一核集中型の長距離電車移動から、居住地域圏内の拠点で活動する多核分散型の短距離徒歩移動に移行する。

出会いを促進する技術の実装

|デジタル化による接触可能性指標の普及

街路を往来する際に容易にお互いの存在を認知できるようになります。人と人との接触可能性指標(どの時間にどの場所を歩くと、どういう属性の人とすれ違って居合わせる可能性があるか)が天気予報や道案内と同等に指示される都市情報になります。

根拠:2021年度時点で区域選定段階のスーパーシティ型国家戦略特別区域の規制緩和が全国に標準化されます。
都市空間では、IoTの実装とモニタリングが実現し、都市活動(機器操作、移動、購買)データやバイタルデータ等を都市経営に取り入れて活用することができるようになります。
SNSサービス上のユーザー情報はデジタルツイン上のバーチャルシティとの同期化が進み、上述のリアルなデータと統合され整合性を持つようになります。

|気軽に立ち止まれる気楽な移動の普及

根拠:運転を必要とする自動車に代わり、徒歩や自転車に加えて低速開放型のパーソナルモビリティが普及し、車道は開放され街路全体がオープンスペースとなります。
Maasの普及により、予定を変えて立ち話をしたり移動を遅らせたりすることに負担がかからなくなります。

|出会いを演出する街路空間マネジメント

知り合い同士が直接出会ったり、知らない人同士が共通の知人を仲介して出会ったりして、街路空間でのコミュニケーションが活発化します。

根拠:現代の埋め込み式ボラードのように、街路空間には歩行者の滞留を想定した座具や照明をはじめとする可変型の什器・備品が備え付けられていて、仮設的に利用できます。
出会い→立ち話→打ち合わせ→懇親など全ての生活行為に可能です。その場に足りないものは自動運転モビリティによりデリバリーされます(ワゴン販売のように街路を行きかっています)。
仲介役が街路にトラップを仕掛けておくことで、仲介役が不在でも初めて同士が出会うことが可能になっています。