チャレンジ誘発・土地守型開発許可制度で紡ぐ、地方のしごとと環境承継

中井 翔太(株式会社 地域計画建築研究所)

空間的視点・しごと環境から見る地方都市の課題

|地方都市市街化区域フリンジ部の管理不全

本国が人口減少の局面に突入し、早10年あまりが経過する。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の『日本の将来推計人口(平成29年推計)』では、2040年には1億1,092万人に減少し、その総人口は、現在の88%程度となるというレポートがなされた。つまり、我々が利用する国土面積が変わらなければ、現在より2割以上減少した人口で、現在の宅地や公共施設を支えていく必要があると言える。

この影響は、空き家・空き地・耕作放棄地の発生をはじめとする土地の管理不全という形で都市に顕在化しており、特に人口減少が顕著である地方都市フリンジ部においてその状況は深刻であると言える。

大阪都市圏における平成27年〜令和2年における人口増減(国勢調査より)

シュリンクを志向する都市政策と今後のフリンジ空間の課題

以上のような状況を鑑み、平成26年度には、都市再生特別措置法の一部改定により、立地適正化計画制度が施行され、多くの基礎自治体では、本制度を活用したコンパクトなまちづくりが進められている。立地適正化計画自体については、都市機能誘導区域への機能集積のインセンティブ付与と居住誘導区域外における一定規模以上の開発に対する届出制度による緩やかな誘導手法であるが、この間、関連制度は徐々にアップデートされ、居住誘導区域外における開発に対して、開発許可制度を適用する「居住調整地域」制度が設けられるなど、少しずつ市街地のシュリンクに向けた手法が生み出されている。

一方で、居住誘導区域から除外される市街化区域や、そこに連単するスプロールした既存の開発区域等における都市空間のあり方については、その議論や実践が十分ではないと言える。

立地適正化計画関連制度として施行された「跡地等管理区域」において「跡地等管理協定」を締結した都市再生推進法人等が適切な管理を担うことが想定されるが、ここにおける“管理”という行為については、「外部不経済の抑制」というニュアンスから逸しておらず、この負担のみが生じる行為に対し、積極的に取り組む主体のイメージが曖昧であり、依然リアリティに欠くというのが著者の所感である。

この「跡地等の管理」という行為をより生産的、あるいはポジティブな行為として捉えるとともに、永劫の「跡地」から脱却し、農的空間や自然的空間をはじめとする社会や環境のエコシステムに沿った空間に還元していくためのプロセスが必要ではないか。

地方における産業と雇用の不足

人口減少は、どの地域でも一様というわけではなく、先般の図からも読み取れるよう、人口は依然、都心部への集中傾向にある。地方における人口流出の原因としては、雇用機会の不足が大きいとされる。

特に、大卒以上の高度人材については、都心部等の地元以外の地域で就職するケースが多く、その傾向は年々、顕著になっているようである。

地方公共団体が考える人口流出の要因
(総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究(平成27年))
地元就職希望者割合の推移
(リクルート『2021年卒マイナビ大学生
Uターン・地元就職に関する調査』より)

近年においては、情報技術の飛躍的な進歩により、テレワークなどの普及が見られ、従来、都心部で行っていた業務を地方でもできるようになりつつある。これは、間違いなく一つの変革に違いない。しかし、地方におけるより積極的な従業動機を根付かせていくためには、もう一歩踏み込んだ可能性を示していくことが要なのではないだろうか。

「地方だから」「私だから」できる仕事

職業を選択するにあたっては、従業地以外にも考慮される事項は多岐にわたる。大学生が就職先として企業選択するにあたっては、「自分のやりたい仕事ができること」が特に重視される(2020年には、「会社の安定」が最重要視されるようになったようであるが、依然、上位であることには変わりない)。つまり、若者が仕事を選択するにあたっては、自己実現や自身の能力の発揮が優先されるのである。

やや短絡的ではあるが、高度人材をはじめとする若者に積極的に地方を従業地として選択してもらうためには、「地方でもできる仕事」や「地方にある誰でもできる仕事」ではなく、「高度人材が地方だからできる仕事」が生まれる環境を整えていくことが必要なのではないか。

地方でのしごとの分類

フリンジ部の跡地の管理をビジネスにつなげる

では、高度人材が地方だからこそ活きるしごととはどのようなものであろう。既存の地方所在企業が魅力的なしごとを提供し、雇用を拡大していくというシナリオもあろう。しかし、本稿では、20年後の都市空間を想像し、その中で、地方が持つ優位性を活かし、新たに生まれゆくしごとの一例について検討するともに、これを実現するための制度を提案したい。

また、ここで示すしごとは、個人の自己実現に向けた行為であるとともに、事業を通じ、フリンジ部の「跡地」を適切に管理し、自然に還元していく社会的役割としてのしごとでありたい。

シーン:フリンジで生まれる起業チャレンジ

ここでは、ある地方都市の市街地縁辺部(居住誘導区域の指定から除外されたことで市街化区域の「跡地」となったエリア)において、しごとを作ろうとする青年とそれを支える面々の人となりを紹介することで、筆者が夢想する20年後の地方の姿の一部を紹介する。

①ヤスハルさん:38歳/男性/一念発起地域起業をめざす青年

・ヤスハルは、兼業農家の長男である。現在、実家では農業はせず、定年後の父母が余生を過ごすのみである。
・地方公立高校普通科を卒業し、東京の国立大学農学部に進学。高度技術を活用した農業の生産性に関する研究に従事、同大学大学院を経て、インターン先でもあった農業機械メーカーに就職した。
・勤務先では、公民連携など日本各地での新規事業立ち上げに参画するも、各地の産業を救えず、先細りするケースの連続に疲れを感じる。
・ある年始。帰省の際、地元の耕作放棄地の数々を目の当たりにするとともに、地元に残った同級生が連呼する「こんなまち」という言葉にそこ知れぬ不安を感じるとともに、「自分が動かなければこのまちは変わらないのでは」と考えるように。
・35歳で、一念発起。まずは、地元での従業を決意。
・地元での仕事の無さに唖然とするも、脱サラし、20年前のクラフトビールブームで成長した酒造メーカーで、3年間の修行を経て、起業にいたる。

②シンイチさん:38歳/男性/熱血行政マン

・会社員家庭の三男。高齢の親の介護などもあり、現在は地元で暮らす。
・地方公立高校普通科卒業、東京の国立大学工学部進学(情報系)し、卒業後、外資系コンサルタント会社に就職。
・親の介護の必要性からUターンするとともに、市役所に転職。業務を徒然なるままにこなす日々に少し嫌気が差すも半ば諦めたような態度をとる。
・ヤスハルが事前相談制度で来所することで、抑揚のない仕事に急展開がもたらされる。
・ヤスハルの事業サポートを通し、徐々に情熱を取り戻す。
・紆余曲折あり、現在は、ヤスハルの下で総務部長を担う。

③マサキさん:55歳/男性/地元の老舗建材屋の後継

・ヤスハルの大志に惚れ、出資するいわゆる「虎」。
・倒産寸前の家業再興に成功したやり手のぼん。
・ヤスハルに投資するだけでなく、事業用地の交渉、ビジネス指南まで広く面倒をみる。

④タツオさん:64歳/男性/農家

・ヤスハルの事業地の裏の村落で、果樹農家を営む。
・年の瀬から斜面地の作業に限界を感じる。子どもは、大阪都心部で自立。後継はいない。
・ヤスハルの事業の一環である就農サポートにより、人出が確保でき一時安堵。
・ヤスハルの醸造事業に、商品価値のない果樹を安価に提供する事業提携を締結。
・作物は、ヤスハルが開発した新しいビアスタイルの商品が知名度を獲得するとともに、ブランドが高騰。

⑤ナギさん:27歳/女性/グラフィックデザイナー

・デザイナーに憧れ短大を出るも、就職後は地元企業で誇大ビラの制作に従事。3年勤続ののち退社。
・その後、夫の家業を手伝う傍、DtoCアプリを活用し、自身の作品を販売し小遣い稼ぎ。
・現在は、同窓会で再会したことを契機にヤスハルの事業のビジュアルデザインを一手に手がける。

<企業後のヤスハルのしごと>
①新しいビアスタイルの醸造事業、飲食事業
・第3次ローカルビールブームの火付け役となった事業。(第2次は20〜30年前のクラフトビールブーム。クラフトビールと名乗る低品質な発泡酒の流通により、ブランドはスポイルされ、一部の本物を残し、倒産多数)
・一定の生産量と流通量を確保しつつも、現地での観光と一体的に売り出すブルーイングパブでの提供を確保することで、「飲みに行く」ことに価値をおいたブランディングが功を奏する。(特にタツオの果樹を使ったコラボテイストが目玉。)
・地元に工業系用途地域の市街地が乏しかったため、醸造所建設を挫折しかけるも、シンイチに近年制度化された開発許可スキームを提案され、ロードサイド型市街地と市街化調整区域の間でなんとか開発許可を獲得。
・醸造所兼パブは規模の割に、敷地面積が大きく、ゆったり過ごせる空間を提供。
②観光宿泊事業
・醸造所の裏手は、丘陵地の麓(ふもと)。古来よりの集落と里山、農地が調和した牧歌的な空間が継承される。
・ガチのネイチャーはちょっとしんどいが、自然豊かな環境で無理なくダラダラすることをポジティブに捉える「麓ガール」(実態は、20年前森ガールやキャンプ女子を自称しており、体力が衰えてきたが気持ちは20代の教養もお金の余裕もあるミセス)をターゲットとした打ち出しがアタる。
・古民家のリノベーションにあたり、集落型地区計画と先の開発許可制度を活用し、包括的な古民家用途転用許可を獲得。
・宿の管理には地域人材を積極雇用。
③農業サポート事業
・前職のノウハウやネットワークを活用したai農機のリースや、就農支援事業による労働力の確保と担い手の育成を行う。
・自社製品と合わせた産品のブランディング、及び流通支援も可能。
④建材の流通支援
・マサキの会社で開発した舗装材の営業代行。
・リサイクによる自然素材を用いた舗装材で、透水性抜群。徐々に土に還るもので、数年に一度の敷設付きサブスク契約が基本。有機的な素材感がウリ。
・低未利用地の自然への遷移期間にもってこい。
・ヤスハルは、この舗装材の活用により、開発許可の土地管理要件(後述)をクリアし、低コストによる管理を実現している。

地方都市で生業をつくり市街地フリンジ部の環境をマネジメントする仕組みの提案

ここでは、全章で記した若者の起業チャレンジと、その結果として見えてくる地方都市フリンジ部の空間マネジメントを実現するための仕組みについて提案していきたい。

空間マネジメントのための諸制度の整理〜遷移する事業評価の考え方〜

提案を述べる前に、まずは、数点の制度を例に挙げ、近年の現在の都市空間マネジメント手法の潮流の変化を整理したい。

①開発許可制度の考え方から見る従来からの土地利用のコントロール手法の性質

新都市計画法(1968年)制定とともに、導入された「開発許可制度」については、「都市計画運用指針」の中で、「①公共施設等の整備や防災上の措置を講ずることを義務付けるなど良好な宅地水準を確保すること、②都市計画などに定められた土地の利用目的に沿って開発行為が行われることにより立地の適正性の確保を図ることという二つの役割を有する」とその性質が述べられている。

つまり、当該制度は、長期にわたり同質の土地利用や施設がその立地に存ずることを前提に、その立地と開発(建設)時の施設スペックを評価する仕組みといえる。これに限らず、都市計画制度の多くはこの考え方に依拠するものである。

②解釈が広がる環境貢献評価

都市再生特別地区や総合設計制度をはじめとする建築物の形態規制の緩和手法における緩和要件は様々な環境貢献評価を取り入れることで、民間事業者による都市再生の取組等の誘導を果たそうとする傾向にある。

例えば、名古屋市の「都市再生特別地区運用指針」においては、「公共空間、市内の緑地や水辺空間、または歴史的建造物などの都市の環境資産を創出・保全・活用」といった緩和を図る建築物とは直接無関係の空間を対象とした行為についても環境貢献として評価する方針が示されている。

名古屋市都市再生特別地区運用指針における環境貢献評価の考え方(名古屋市HPより)

③提案者の企画や能力に基づくP-PFI制度

都市公園法の改正(2017年)により導入された「公募設置管理制度(P-PFI)」は、公園管理者である自治体が都市公園を活用した公園施設の設置と管理に関する提案(公募設置等計画)を募り、活用を図る事業者を選定するというものである。

この選定にあたっては、設置する公園施設のスペックだけでなく、施設管理・サービスの水準といった継続的な行為と、それに割くコストを含めた運営(マネジメント)の企画とそれを実行し得るかといった能力(資本力・実績)を総合的に評価する。また、選定した事業者とは、基本協定を交わすことでその担保を図るというのが当該制度の概要である。

P-PFIのスキーム(都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドラインより)

①をはじめとする開発時の空間性能評価を基本とした従来的な都市空間のコントロール制度とは対照的に、②③をはじめとする近年の取組は、都市空間への継続的な働きかけが評価される傾向にある。

さらに、③については、継続的な働きかけの実行性を担保すべく事業主体自身のスペックを計ろうというものである。

このように、都市空間に質的な向上が期待される時代の中で、評価対象は、一断面的行為から継続的な行為(実行主体)に遷移しつつあるといえる。

また、③の事例をとるに、事業により生じる建築物や土地利用が、永続的なものであるという前提から、都市空間履歴のある一場面(コンテンポラリーなもの)に過ぎないという解釈に変異しているのかもしれない。以降は、この傾向を基本に、制度のあり方を述べたいと思う。

達成すべき課題の設定

本章冒頭において、「若者の起業チャレンジの結果として見えてくる地方都市フリンジ部の空間マネジメントを実現するための仕組み」としたが、ここで、これまでの問題提起などを踏まえ、提案する制度により達成すべき課題を改めて整理する。

①シュリンクエリアのマネジメント主体の獲得

居住誘導区域外の市街化区域(今後指定される居住調整地域など)において、土地を適切に管理するだけでなく、農的・自然的土地利用への遷移を図るマネジメント主体の出現が求められる。しかし、その行為には当然、コストが生じることから、その主体に対しては何らかの動機付けが必要となる。

②地方の強みを活かした創業機会の提供

地方都市フリンジ部では、今後、開発圧力が低下することが想定されるそのため、まとまった土地の活用が可能になると想定される。また、郊外部特有の環境も魅力である。このような強みを活かした「地方だからできるしごと」を生み出せる機会を提供していくことが求められる。

③事業企画・人材の評価の視点に基づくマネジメント主体の選定システムの実装

「跡地」を持続可能な空間に遷移させる継続的な活動が求められることから、シュリンクエリアのマネジメント主体を指定するにあたっては、その活動(事業)企画や実現性(いかなる人材か)を図ることが望まれる。

|土地守型開発許可制度の提案

まず、当該制度の開発許可の手続、及び事業進行のイメージを図(土地守型開発許可制度の活用フロー)に示すとともに、ポイントを整理したい。

1) 土地守事業計画の作成

・当該制度においては、土地のマネジメントの可能性を評価し、開発許可を行うことから、事業主体は、跡地(開発区域)のマネジメントを含む事業計画を作成する。
・許可権者である自治体は、円滑な手続とフリンジ空間の適正管理を推進する観点から、事前相談を受付け、事業主体の計画策定支援に努める。

2) 土地守事業計画を活用した金策

・事業の実現性を担保するため、事業主体は、自治体のアドバイスを踏まえた事業計画を以って、事業資金の確保を図る。
※事業資金の確保手段については、後述参照。

3) 事業タームの設定と進捗管理

・本事業は、事業を育てつつ、漸進的に跡地のマネジメント(農的・自然的空間への遷移)を進めるとことを目的とするため、事業着手時の初期投資により必要な施設全てを整備しきることが困難なおそれがある。そのため、段階的な整備を容認するとともに、事業タームを設定し、都度、進捗報告・検査を行うことが必要である。
・また、事業タームの節目において、事業主体と自治体の協議の場を設けることで、経営状況を踏まえた管理方法や、適切な現状復旧・承継のあり方を見直していくことが重要である。

4) 現状復旧

・事業撤退時の現状復旧については、当然、農的空間・自然的空間に遷移させることが求められるが、事業の効果に応じたシナリオが想定される。

現状復旧のシナリオ
土地守型開発許可制度の活用フロー

②複層的開発許可区域

従前の開発許可制度では事業に用いる施設が必要とする最低限の区域に対し、開発許可を与えるものであるが、本制度は、あくまで遊休地を適切に管理し、農的空間や自然的空間への回帰を目指すことを旨とすることから、建築物等の立地は最低限とするとともに、マネジメントを行う区域を事前明示することが必要であると考える。

そのため、開発許可区域の中に、以下のようなサブゾーニングを定めることが想定される。

1) 事業区域:事業に必要な施設立地を図る区域

2) 回帰促進区域:日常管理、遊休施設の撤去、農地開発、植樹等を行うことで回帰を促す区域

開発許可区域の設定のイメージ

③開発許可要件設定の視点

次に、当該制度で許可対象となる事業及び人材の要件を定める際の視点について整理したい。

開発許可要件となる審査の視点

④事業の実現をサポートする金策支援

「土地守型開発許可制度」は、その利用者を選ぶものではないが、若者を中心とする高度人材の地方におけるスタートアップを想定することから、資金調達が大きな事業障壁となることが想定される。

また、「土地守型開発許可制度」を用いて行う事業は、跡地の管理や回帰といった公共性の高い取組であることから、公的な支援があって然るべきである。

これを踏まえ、以下の資金調達支援メニューを検討する。

開発許可要件となる審査の視点

執筆後記

今回、一人の若者が、行政マンや投資家など地域の人々に支えられながら、社会使命を感じ、自己実現としての起業を果たすことを通じ、来たる地方都市市街地フリンジ部の空間的課題を解決するストーリーを夢想しつつ、これを実現するための制度提案を行った。

しかし、このストーリーは、事業が立ち上がった時点で終焉を迎えるわけではなく、むしろ、その後の事業成長や若者一人の手を離れても地域に根付く段階にその意義があると考える。

話は変わる。一時期、「マイルドヤンキー」という言葉が流行した。これは、地元志向が強く、保守的な若者層を指すようであるが、はたしてこの層は、生前的に保守的思考を有するのであろうか。先のストーリーで多くは触れられていないが、「ナギさん」という女性は、一時の夢を諦め漫然な暮らしに落ち着こうとするという大多数の一人として登場している。しかし、ヤスハルとの出会いで再度、自己実現を果たしているのである。

周りくどくはあるが、ここで描きたかった地方の将来とは、Uターン人材が活躍するだけでなく、それぞれの成長・進学とともに、接点を失ったいわゆる地縁関係者同士が、再び出会い、「高度人材」や「地元残留組(マイルドヤンキー)」といったカテゴライズを超え、各々のクリエイティブを発揮し、ともに躍動し、協働する独立した文化・経済圏なのである。

今後、人口減少により起こる都市の変化は、「定常型市街地をつくる(東京都立大学都市政策科学域饗庭研究室)」でも指摘されるように、市街地縁辺部から一様にシュリンクが生じるようなものでもないかもしれない。しかし、人口減少の進展により生じる空間がさらなる将来において遺恨とならないようにするとともに、地方都市にとって前向きな役割を担う場所とすることができる都市計画のシステムを考えていきたいものである。