2040年モクミツのライフスタイル像

石原 凌河(龍谷大学)

モクミツ内の狭小な土地・建物を売却する人々が増加

人口減少・少子高齢化により空き家・不在地主の問題が更に深刻化を増し、2040年には空き家の所有者や相続に関する問題を解消するための施策として、モクミツの空き家となっているまとまった土地・建物を買い取ることができるとともに、まとまった敷地を一団地として認定される仕組みができる​。その結果、空き家となっているモクミツの狭小建物を中心に売却が進むとともに、モクミツに価値を見出している地主がモクミツの土地・建物を面的に買い取ることで、再開発や区画整理のようにクリアランスするのではなく、既存のモクミツの外形を残しながらも、モクミツの魅力を面的に向上する動きが拡がる。

Society5.0による防災技術の向上

2040年にはAI・IoTを駆使した災害の予測や消火・救助・避難誘導技術の導入や、SNSやアプリケーションを活用したリアルタイムでの災害情報の提供がなされることから、災害による犠牲者や負傷者を今よりも大幅に低減することができる1)

例えば、事前予測システムによって地震がかなりの高確率で予知できることから、地震であっても事前の情報をもとに住民は避難が可能となる。避難する際には、救助ロボットやドローンを用いることで、歩行による避難が困難な場合でも、上空から迅速に避難が可能となる。地震発生の直前からガスの供給や家電製品のスイッチが自動的に静止させることができるため、家庭内での出火や通電火災を抑えることができる。そのため、新しい技術を導入することによってモクミツの安全性は大幅に向上するため、現行の建築基準法で定められている接道義務やセットバックは不要となり、モクミツの長屋や町屋で安心・安全に住まうことができる

居住スペースの余裕化

テレワークの更なる進展によりルーティンでの通勤が不要となり、自宅から仕事をする機会が増える。モクミツは狭小住宅が多く自宅内に新たにワークスペースを設けることは難しい。人口減少と高層建物の増加により一人当たりの居住スペースは今よりも余裕ができることから、単体建物で生活を完結するのではなく、複数の建物を共有しながら生活するライフスタイルが生まれる。長屋ごとにリビング、ダイニング、コワーキングスペース、バースペース、寝室などの機能分担が進み、居住者同士でシェアしながら暮らしていく。

ファンが支えるモクミツ

モクミツの居住者のみならず、モクミツのファンもモクミツのエリアを使いこなすことができる​​仕組みができる。モクミツのファンクラブが開設され、一定の年会費を払えれば、モクミツに短期滞在が可能となる他、モクミツ居住者や会員同士の交流会に参加することができる。アドレスホッパーの滞在拠点としてもモクミツが選ばれるだろう。

コンセルジュがモクミツに住み込みながら、モクミツを管理し、短期滞在者をもてなし、モクミツを面白くするイベントを主導する。ファンクラブの年会費はコンシェルジュの賃金に充当される。モクミツに限らず、一定の場所を管理したりイベントを企画するコンセルジュが新たなまちづくりの職能として注目される。

モクミツ内には短期滞在スペース、バースペース、カフェスペースなど新たな場所が生まれ続けていく。モクミツファンからのクラウドファンディングによって新たな場所を建設するための費用に充当される。このように、モクミツのファンがモクミツのまちを作り続けているのである。

モクミツ・キャラクターの誕生

これまでのように同じ場所に永続的に住み続けるモデルから、10年単位で住み替えていくサイクルが浸透する。その結果、エリア特性と居住ニーズとのマッチングが進み、モクミツを嗜好するという価値観が似た者同士の人々がモクミツに住まうようになり、居住者のキャラクターがエリアのキャラクターとして反映されるようになる。モクミツ・キャラクターの特性はまだ明確には示せないが、筆者のように世間の流れに抗いたい一風変わった人々が住まうようになるのではないか?

参考文献・資料

1) 内閣府「Society5.0とは」(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/)(2021年10月3日参照)
2) 南吹田琥珀街プロジェクト(https://kohakugai.com/)(2021年10月3日参照)